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Cornelius(小山田圭吾さん)と対談させていただきました。V0l 3

「ニューウェイブの中にあるアンビエントやミニマルの要素」

堂森:
今回のブランドムービーですが、空間音楽の広がりもあって、仕事でちょっと疲れていたり、嫌なことがあったりする時に、あの映像と小山田さんが作ってくれた曲を聴くと脳が解放されていくみたいな感じがするんですよね。

小山田さん:
それはよかった。

堂森:
音も、聴く度に何か違う音が聞こえてきたり、耳の中でも外でも広がっていくというか、空間音楽的というか。映像と音楽の組み合わせも素晴らしくて。・・・

小山田さん:
そういうちょっとアンビエント的なものに興味を持ったのは20代後半ぐらいで FANTASMAやPOINTを作っているときぐらいで。 アンビエントとかミニマルとかそういうものにハマっていた時期があって、まあその辺からじゃないですかね。でも高校生とかに聴いていた ニューウェイブには、音楽の中にそういう要素ってすごくあったんで 。

そういうのも含めて自分にしっくりくるようになったのが20代後半ぐらい。 そのタイミングで映像を使うことも始めて、その辺から「映像に音つけてください」みたいに依頼される仕事が多くなって。そこから色々自分で試してみたり、さらに自分の作品にもミニマルミュージックとかアンビエントとかの影響が入ってきてという感じですかね。

堂森:
ニューウェイブの中にアンビエントやミニマルの要素があるっていうのは、そうですよね。

小山田さん:
うん、ちょっと不思議な空間的なという。その代表格がブライアンイーノ 。学生時代や20代前半の頃って。ロキシーミュージックとかブライアンイーノのソロも 最初の3つぐらい好きだったけど、当時は、アンビエントになるとちょっとね、違うなぁみたいな感じがしていたけれど、大人になって聞いてみるとアンビエントの方がしっくりくる。

遡って考えてみても、ブライアンイーノ自体がニューウェイブをほぼ 最初にやっていた人という感じがありますよね。中学生とか高校生の頃U2とか聞いていても、そこにブライアンイーノのあの空間的な感じとか最初から入っていたりしてね。

「東京生まれの東京育ち」

堂森:
小山田さんは、東京生まれの東京育ちですよね。  ブランドムービーの話に戻りますが、私の故郷のような田園風景はどんな印象を持たれますか? 田舎だなあとか思われますか?

小山田さん:
僕らはあのアンビエントな映像に、ちょっと憧れはありますよね。子どもの頃、みんな夏休みになるとおばあちゃんの田舎に帰省する同級生がたくさんいて。自分は、実家が東京だったので、おばあちゃんも東京、両親も東京、みんな東京なので故郷、帰省先というのが無いんですよね。幼い頃は、従兄弟のおばあちゃんの実家が岩手の方にあって。行ったりしたことはありましたけど、元々、原風景みたいなものではないから、みんなそういうのがあっていいなって 思っていました。

堂森:
ああ、そうなんですね。あのような風景が、小山田さんにとって、どのように映るのかなと思ったので「いいな」って思ってもらっているのは ちょっと嬉しいですね。この風景を見せてどんな印象をもつのか、ドキドキしていたので。

小山田さん:
でも、今回の映像の風景は、原風景なんだけどあの岩があることによって何かすごい神秘的な空間に見えますね。

堂森:
あの映像と小山田さんの音楽で、そのシーンに惹かれる人も多いと思うんです。岩の存在は確かにあの風景の象徴的なものですね。

小山田さん:
あの、僕の4代か5代ぐらい前の先祖が、柳生但馬守神、柳生一族の 家老だったんだって。

堂森:
えっ、そうなんですか?

小山田さん:
柳生一族って奈良県にあるんだけど、奈良に柳生の里みたいなのがあって、柳生一族って剣で有名じゃないですか。最後は、結局滅ぼされちゃって、その柳生のお城っていうのは全部無いのだけど、 家老屋敷っていうのはまだ残っていて、小山田主鈴さんっていう200年ぐらい前の先祖のお屋敷らしんだけど、その隣に親戚が住んでいるんですよ。

堂森:
小山田さんにそんなルーツがあったなんて、知りませんでした。

小山田さん:
何年かに1回、小山田家の集まりがあって行くんですけど、そこに柳生の剣豪が昔、切って縦に割れたという伝説がある「柳生一刀石」という大きな岩があるんです。映像の石を見て、それを思い出しました。

堂森:
そうなんですね!そんな縦に割れている岩があることは知りませんでした。一度、見てみたいです。故郷の石は、伏石(ぶくいし)と言って数万年前から数百万年前に山が崩れて残ってる石らしいんですよ。何個かあるのですが、映像の石は象徴的で、とても大きい。数万年前の石で人間の寿命よりは遥かに長い期間あの場所にいるわけですよね。そう考えるとあの石が全ての移りゆく景色、生物、人、大地を見てきたと思うんですよね。ここで起こった全部を知っているんだろうと感じました。


粒子と波動「二重スリット実験」

堂森:
ブランドムービーの最初に2本の縦縞があって、 最後にまた2本の縦縞が出てくるシーンを覚えていらっしゃいますか? あれは、二重スリットの実験をイメージしていて。

小山田さん:
あ、そうなんですね。 なるほど。そういえば、何か量子力学の話をしていましたよね。

堂森:
はい。僕は専門家でないですから、うまく言葉に出来ないのですが、古典物理学では矛盾する粒子と波動が、電子のような粒子を用いた二重スリット実験は、量子力学の世界で、粒子と波動の二重性を示す実験として有名で、あの女の子は実は1人の観察者で。波がこう2つのスリットから複数になる縦縞が観察者を立てることで2つ戻るというそういう意味合いを持たせました。

小山田さん:
そういうことだったんですね。なるほど、なるほど 。

堂森:
はい そうなんです。ムービーの中で突然、景色や岩が細かくなって戻るシーンがありましたよね。粒子や波動を示していて。小山田さんは説明せずとも音の変化でそれを表してくれて、理解してもらえているようで本当に嬉しかったのです。こういう話ってご興味ありますか。

小山田さん:
量子物理学ってすごい難しい話だから 僕はそんなにわかってないけれど、めちゃくちゃ興味があって。と言ってもただYouTube見ているだけなんですけど、人間が今まで 想像できなかったような世界が すごい小さな世界の中にあって、それがこう世の中を作っている原理だったっていうことが本当に興味深いなって思って 。

堂森:
私も物理とか得意じゃないので、分かっているわけじゃないけど今回、故郷(福井県大野市)の景色で表現したかったというのもありました。一方で、今回 能登の震災が、元日にあって。あのエリアは、社会人で働き出して 最初に仕事したところで。

小山田さん:
そうだったんですね。

堂森:
いろんなものが無くなっちゃったじゃないですか。だから何か残さなきゃなって。あるものが突然、無くなってしまうわけですから。あの映像の中でも実は、もう無い建物もあるんですよ。撮影した直後に壊されて。

小山田さん;
ああ、そっか、そっか。

堂森:
その建物は古いから壊されたんですけど、逆に、ああいう何万年前の岩が残っているというのは、何か不思議な気がするのです。全く根拠などないですが、あの岩は宇宙と繋がっているんじゃないかとか、そんなことを想像したり・・・

小山田さん:
うん うん 。

堂森:
あと、視覚に対しての疑いっていうのがすごくあって。 自分が見ているものって本当に正しいのかみたいな。

小山田さん:
そういうのもYouTubeで見ていますけど。 光の可視光線しか僕ら見えてないっていう話ですよね。結局X線とか紫外線とか不可視光線は人間には全然見えてないから、 その自分が見えているものってね、どれだけ正しいかね、それはもう本当分かんないですよね。

堂森:
はい。二重スリット実験の観察者を立てることで、自分が何を見ているかというのもあるし、いわゆる事物がこっちをどう見ているのかみたいなことを改めて考えさせられるというか。名もない原風景的な故郷ですが、何か映像で表現できないかな、残せないかなというのがきっかけとなっての映像制作でした。

その時に、じゃあこの世界を表現できるアーティスト・音楽家といえば、小山田さんしか思い浮かばなくて、前回に引き続きお願いした次第です。素敵な映像と音楽。そして、こんな素晴らしい話を今、小山田さんとすることができて、嬉しく思います。

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【NAKED CLUE】In a Blink of an eye(Music:Cornelius)



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