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Cornelius(小山田圭吾さん)と対談させていただきました。V0l 1

Cornelius:小山田圭吾さん 
1969年、東京都生まれ。89年にフリッパーズ・ギターのメンバーとしてデビュー。91年の解散後、93年よりソロユニット・Cornelius(コーネリアス)として活動を開始し、国内外で注目を集める。2023年に最新アルバム「夢中夢」をリリースし、30周年を迎えた

撮影:中村彰男

印象的だった「岩」の存在

堂森:
今日はお時間をいただきまして、ありがとうございます。またブランドムービー(In a Blink of an eyes -Ono Perspective)の音楽を制作いただきありがとうございました。今回は映像を先につくってから、小山田さんに音をつくってもらったのですが、映像を見て、何か感じたことはありましたか。

小山田さん:
一番、印象的だったのは最後の石ですね。でっかい石。あれがかなりモノリス感(※)というかね。 なんか すごい不思議な存在感で 。SF的な感じがちょっとしたというか 。

(※)建築物や遺跡の内で配置された単一の大きな岩や、幾つかの山々のように1枚の塊状の岩や石から成る地質学的特徴を表すもの

堂森:
映像をみて、まず音が浮かびますか。それとも何かのリズムとか。

小山田さん:
うん、まあそうですね。テンポを最初に決めないといけないので、まずはBPM(※)ですね。今回は、映像を見ながら、シーンによってテンポを変えるのも良いかなと思って。いろんなテンポで打ち込んで。あのキーになる石のシーンに こう気持ちよく合うような感じを探れたので。そこからスタートっていう感じですね。

(※)Beats-Per- Minute(1分間の拍数)

堂森:
実は映像制作の際に 映像チームは仮で曲入れをしてイメージを膨らませていました。その曲はCorneliusの「サウナ好きすぎ、より深く(※)」だったんですよ。

(※)“サウナ好きすぎ、より深く”は、テレビ東京 ドラマ『サ道』の主題歌として2019年に発表した“サウナ好きすぎ”のニューバージョン。

小山田さん:
ああ、そっかそっか。 へえ。

堂森:
サウナ好きすぎは、テンポが遅い(BPMが低い)ですよね。実は小山田さんに映像を提出する際、 仮の音を入れたまま、提出しようかどうか、迷いました。ただ懸念点があって、サウナ好きすぎと同じ様な感じで出てきてしまうんじゃないかと。

最終的には、仮の音を抜いて、映像のみでお渡ししました。折角、制作いただく機会ですし、まずは小山田さんのイメージを大事にしようと思って。実際のテンポは、想定より速かったけれど、小山田さんがつくってくれた音楽が最初から良くて、その選択は正しかったと感じています。質問ですが、このテンポに決まった理由みたいなものってありますか?

小山田さん:
BPMとかリズムって 映像の雰囲気から 何となく 感じる部分っていうのがあって。速すぎず、遅すぎず。 倍で取っても心地よくて、半分にしても良いのっていうとやっぱり(BPMが)120前後になるんですよね。

後はカメラの切り替えや 映像の中の動きなど、仮のクリックに対して割と気持ちいい位置でアクションがあるかどうかっていうのを探って作り始めるという感じです。 リズムが決まったあとは キーとかね。キーも 何となくコード感みたいなものを最初にいれてみてという感じですかね。

堂森:
今回のブランドムービーには、いろんなシーンがあります。朝の光や雲と田園風景。蝶や小川の動き。最後の岩など。それぞれのシーンでそれらを表現する一つの音や音の重なりが違うのですが、そういう音は小山田さんの頭の中にストックされていて、出てくるのでしょうか。

小山田さん:
音色に関しては、基本的に使う音はあるけれど、例えばその動きに対して長い音がいいのか短い音がいいのかとか。 映像を見ながら、穏やかな調子だったらそれに相応しい音、不穏になってきたら ちょっと変えるとか、そんな感じですかね。

堂森:
映像をずっと見ながら、音を決めていくのですか。

小山田さん:
そうですね。上のモニターに映像が常にあって、シンクロした状態にしておいて、それを見ながら、音を作っていくっていう感じですかね。 映像を見ながら、何か小さいものだったら高い音程とか、大きなものだったら 低い音程とか、そういう映像と音との関係性は考えながら作っていますね。

堂森:
今回、制作いただいた音楽は、最初にいただいたものと、最終決定のものとは違っていて。最初に届いたのは、完全なアンビエントでビートが無い感じ。とても浮遊感があって、空間の広がりや時間を忘れるような雰囲気で終わりも無い感じがして、とても心地良かったです。良かったのですが、それでも、変えたいと要望しました。

最初の音も、それは素晴らしくて、映像チームも気に入っていたのですが、私は最後の岩が象徴的で。そこに向かわせたい思いが強くなってきて。後に向かうにつれて、気持ちが高まっていくようにして欲しいと要望しました。

結果、途中からビートが入ってきて、最後の岩でうねる。最後、深呼吸するようにピークアウトしていく。想像以上に良いものでした。要望を伝えて良かったなと改めて思いました。

ただ、一度つくったものに変更依頼が入るのは、どんな気持ちですか。混乱することなど無いのでしょうか。

小山田さん:
いや別に全然。解釈もさまざまだし、その要望に応えるいろんな方法があるので。

そっちのアプローチだったら、まあこういう感じとか。今回のように途中からビートを入れて、石のところで低音域も強めて気持ちを高めるとか、方法はあります。

堂森:
依頼した側の気持ちとして、変更を希望することは、折角、つくってもらった音楽やプロセスを壊すようで申し訳ないというか。特に今回のように気に入っているのに、新たな要望を言うことは、勇気がいるものです。

小山田さん:
こちらも探りながら制作しているから、イメージがある人のアイデアを聞きたいですね。わからないものを対応するのは難しいですが、今回の要望は理解できる範囲だったので大丈夫です(笑)

堂森:
私は最初のバージョンも、捨てきれず、両方で進めたかったのですが、日程も含めて難しかったようで、我々だけが耳にしたものとして心に留めておきます。あの浮遊感、ループがずっと続くのも本当に気持ち良いので。最初のもそれぐらい気に入っています。お蔵入りさせてしまったのがもったいないぐらいです。

インタビュー続き・次へ(Vol2)

【NAKED CLUE】In a Blink of an eye(Music:Cornelius)


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