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旗と風 ― 15期のはじまりに

本日10月1日、私たちは15期のスタートを迎えました。

この節目に、一枚のイラストの話をさせてください。「数えられるもの、数えられないもの」というテーマで、描いてもらった絵に付いていたタイトルは、「旗と風」でした。

旗は数えられます。風は数えられません。けれど、旗がなければ風は見えず、風がなければ旗ははためきません。どちらか一方だけでは、あの揺れる姿は生まれないのです。

この絵を見たとき、私たちがこの15年、向き合い続けてきた仕事そのものが描かれているように感じました。

私たちは、企業と生活者のあいだに立つ仕事をしています。そこには、数字に顕れるものがあります。売上、購買データ、調査の結果、広告の反応。これらは、はためく旗のように、確かに目に見えるものです。

一方で、数字には顕れないものもあります。生活者が商品を手に取るときのささやかな期待、言葉にならない不満、「こういうものがあったらいいのに」という想い。そして、企業が商品やサービスに込めた願い。これらは、目には見えない風のようなものです。

私たちはこの15年、そのどちらも大事にしてきました。

旗は、確かな事実です。数字は、生活者の行動や企業の成果を正直に映し出します。私たちはそれを、そのまま大事にしてきました。

風は、数えられないものです。生活者の気持ちも、企業の想いも、すべてを数字にする必要はありません。見えないからこそ、見えないまま、丁寧に感じ取ることを大事にしてきました。

旗の立っていないところにも、風は吹いています。データには顕れない生活者の本音や、まだ誰も気づいていない共感の芽。そうしたものを感じ取ることこそが、Insightを感じ取るということなのだと思います。

そして時には、旗を立てることも大切です。見えない風がそこに吹いていることを、企業と生活者の双方が分かち合えるように、小さな目印を立てるのです。

風を無理に数字へ変えるためではなく、互いの気持ちが届き合うようにするためです。

見えるものは、見えるものとして。見えないものは、見えないものとして。そして、分かち合えるものには、そっと旗を立てる。

企業と生活者のあいだに吹く風を読み、ときに旗を立てることで、双方のコミュニケーションを少しずつ円滑にしてきました。その積み重ねの中で、企業の想いが実を結び、生活者のもとへ、より豊かな商品やサービスが届いていく。私たちは、そんな旗と風の循環の中で、ここまで歩いてきました。

禅に、旗と風をめぐる古い問答があります。寺の旗が揺れるのを見て、ある僧は「旗が動いている」と言い、別の僧は「風が動いている」と言って譲りませんでした。そこへ、のちに禅宗の六祖となる慧能が「風が動くのでも、旗が動くのでもない。あなたたちの心が動いているのだ」と答えた、という話です。

数字の揺れの向こうに、人の心の動きがある。マーケティングの仕事をしていると、この問答が決して遠い昔の話ではないように感じます。見えるものも、見えないものも、その奥にある心に寄り添うことで、初めて本当の意味で大事にすることができるのだと思います。

15期も、変わらず旗と風の両方を大事にしていきます。数字に誠実に向き合い、数字に顕れない想いを見えないまま慈しみ、企業と生活者のあいだに、共感という風が気持ちよく吹き抜けるように。その先に、明日へと続く道があると信じています。

15期も、どうぞよろしくお願いいたします。

Art Director: 
michiko eguchi(hoagrafika)

Illustration:  
momona eguchi  

Planning : 
tomohiro doumori(naked clue)

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